白 ハク



息子の名前はハク。 浜武 白 僕が決めた。本当にいい名前に決めたと自負している。
こどもの名前を考えるにあたり僕は、シンプルで潔い名前にしたかった。だから白。真っ白で汚れてなくて、正義であり、天使であり生であり死である。そして神である。あ、紙でもいいけど。白は全ての可視光線を反射する色であり、光の三原色を合わせた色だ。巳年の息子なので白蛇は大変縁起がいいし、お米や小麦や塩や砂糖、白いものは命に繋がる。僕が絵描きなので、真っ白なキャンバスをイメージしたのも理由だ、特に新品のスケッチブックが好きでサラの状態で真っ白なスケッチブックを開いて何を描こうかと考えるだけでワクワクして気づいたらまたスケッチブックを買ってしまっていたこともあった。理由はどんだけでもあげられるので、一応九十九個あることにしている。百−一=白ということで。。。

お腹の子は男の子だと言う、日々名前を考えていた、仕事帰り会社を出て駐車場に向かう、田舎の夜は暗い、街灯も少なく月明かりを頼りに車へトボトボ歩いていた。ふと見上げた夜空に白く綺麗に輝く月を見た。息をのんだ、しばらく見上げたまま立ち尽くしていた。綺麗だった、悲しい様なあたたかい様な、その光はこの世の闇を優しく包んでいるように見えた、この真っ暗な世界の出口のようにも見えた。
産まれた男の子は二人によく似た、色の白い、よく笑う子だった。
お腹の中にいたのはお前だったのか。僕等は家族だ、ずっと家族だ。

父になる

絶対に出産には立ち会いたい。その願いを叶えるためミッチは里帰りをせず九州での出産を決めてくれた。妊娠の時間は二人にとって、それはそれはゆっくりとした穏やかな時間だった。日に日に大きくなる妻の身体の変化に、生命の凄さと愛おしさを感じずにはいられなかった。産婦人科の検診には毎回ついて行き、お腹の中の命をエコー画面を通して確認し、高まる気持ちをおさえつつベビー服等はなるべく買わないようにした。僕等なりの安産祈願だった。秋の終わりにいよいよ出産をむかえた、会社を休み万全で備えたが、実際僕の出来る事はほとんど何もなかった、その無力さを感じる事が立ち会い出産の醍醐味なのだ。陣痛が始まり、歩く事すら可愛そうなミッチを見ていたら、この先の出産はとんでもねー事が起きそうだと容易に感じれた。〜中略〜長い長い陣痛の末 オギャーと産声を聞いた時、赤ちゃんの誕生よりまずは妻の無事が何より嬉しかった。出産とは大変、それは男がいくら頑張っても到底それには敵わないものである。ヘトヘトになった妻とフラフラの僕はそれでもこの僕等のちいさな家族を優しい目で見て微笑んだ。まだまだ未熟な二人で父にも母にもなれていないのだけど、これから僕は父に、ミッチは母に、
そしてとんでもない事が始まった。ただそう感じた事は覚えている。それくらい目まぐるしかった。